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『図書新聞』読書アンケート(2011年上半期)
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『図書新聞』読書アンケートについて
『図書新聞』の2011年上半期の読書アンケートで、私は以下のように答えました。
7月23日発行(3023号)です。
なお、最初の『完全版・池澤夏樹の世界文学リミックス』に関しては、別途『週刊読書人』
の8月5日号に書評が掲載されています。
①『完全版・池澤夏樹の世界文学リミックス』池澤夏樹(河出書房新社)
デイヴィッド・ダムロッシュ『世界文学とは何か?』(国書刊行会)はまだ半分のカフ
カの章までしか読んでいないので断定はできないが、ここでの「世界文学」の洞察に向
き合う最も今日的な仕事は、池澤夏樹の個人編集『世界文学全集』であろうと思う。
その魅力的なガイドである本書は、夕刊紙連載の平易な語り口ながら、深い読みの知見
を随所に示している。
②『梁塵秘抄』後白河法王・編纂、川村湊訳(光文社古典新訳文庫)
3月11日以後、「読書」の意味の偏差を自覚しながら読み進めた原発人災をめぐる危
機の言説から3冊を選ぶこともできるが、今の段階では留保しておきたい。したがって
川村湊の15日間の記録『福島原発人災記――安全神話を騙った人々』(現代書館)は
確実にその一冊になるものの、あえてこの筆者による痛快な訳書をあげたい。
訳詩に鶴田浩二や藤純子が出てくる斬新な「今様」訳は、手前勝手にメロディをつけて
唄いたくなる。
③『小島信夫批評集成』全8巻(水声社)
私も編集委員の一人なので、取り上げるのはややルール違反かもしれないが、今日の文
学シーンのなかで、この企画の意義は特筆すべきものと思い記しておきたい。どの巻も
読むほどに、小島信夫という作家の類い稀な批評的運動性が限りなく思考を刺激してく
る。最終配本・第7巻の堀江敏幸の解説は、見事な小島信夫論で一読に値する。