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『図書新聞』読書アンケート(2013年上半期)
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『図書新聞』(7月20日発行)の2013年上半期読書アンケート
①『とうもろこしの乙女、あるいは七つの悪夢』
ジョイス・キャロル・オーツ著、栩木玲子訳(河出書房新社)
わざわざ「悪夢」と記してある小説など読む気にならないが、本書は例外。秀逸なボ
クシング論(『オン・ボクシング』)に魅了されて以来、いつも気になる女性作家であ
るから。7中短篇それぞれの恐ろしくも、えぐい物語の味わいと優雅な書法には格別
な読みの愉楽がある。
②『アメリカ、ヘテロトピア――自然法と公共性』宇野邦一著(以文社)
現代フランス文学・思想を専攻する著者によるヘテロトピアとしてのアメリカ文明論。
「法外な生命力」(D.・H・ロレンス]と「政治的公共性」(アーレント)を軸として、
アメリカ的葛藤にあらたな思索を進めた、〈外部の思考〉のスリリングな実践の書だ。
③『髑髏の世界―― 一休宗純和尚の跡をたどる』中川德之助著(水声社)
一休のエロティシズムを自在に論じた永田耕衣の評論の記憶を重ねつつ読み進めたが、
たちまちそれらは背景に退いた。本書は精緻な読みと慎重な仮説で資料を読み解き、一
休の虚像と実像を剔抉する。〈仏界、入り易く、魔界、入り難し〉と、まさに入り難い
「魔界」を生きた一休像に小説的興趣すら覚えた。